老舗の喫茶店が土地明け渡しのために閉店を余儀なくされた。
店の解体作業は進み、床に敷き詰められていた煉瓦もところどころが剥がされて、
土埃が舞う店内で僕達は思い思いにカメラを構える。
通りに面している入口の扉と大きめの飾り窓はすでに取り壊されており、撮影用のクリップライトが
薄暗い空間をほんのりと照らしだし、僕達のシルエットを浮かび上がらせる。
板敷きの壊されかけた階段をそっと登ると、二階部分にはかつての面影が偲ばれる。
道往く多くの人々が何事かと店内を覗き込んでくる。
テレビドラマのロケと勘違いをして、話しかけてくる人もいる。
閉店したことを非常に残念がり、青春の思い出を熱く語り出す人さえ現れた。
寂しさは募るが、なんだか妙に楽しい撮影会であった。
ブロニカSQ-Ai ZENZANON-PS110mmF4、ZENZANON-S40mmF4 コダック400TMY